――夕暮れの街にたどり着いたのは長い夢の途中――
あの時のこと、今でも忘れない。初めての"光"と、ものすごく他人行儀な"向こう側"を……。
ずいぶんと長い間あたたかに包まれて眠っていたから、新鮮な何かを待ち望んでいたのかもしれないな。良い印象なのか悪い印象なのか、そんなことはどうだってよかった。目の前に広がる景色を、ただひたすら頭の中に刻んでいた。裸のままで俺が気にしていたのは、結び目なんだ。
細胞の一つ一つは、結び合うために存在するのか、それともいつかは一人になるため?
もしそれが分かっていたら、おまえとこうして抱き合うことだって意味のないことなのかもしれない。
いろんなことがあるだろうよ、いろんなものがくっついたり離れたりするんだと思う。あまり良い印象じゃなかったけど、こうなるもっと前からなんとなく逢える気がしてた。だからもっともっと嗅いでくれなきゃ嫌なんだ、一つも残さずにね。この俺の言葉、嘘じゃないからさ。
息をすることがあたりまえな人間は、不慣れな空間を「息苦しい」と言う。新しい場所を探して生きている感覚より"慣れ"が先行していることを誰もが認めようとしない。"情"なんか存在すんのか?
実際。俺は人を傷つけてばかりの俗にいう"嫌な奴"だけど、おまえと"情"で結ばれる気などはじめから無かった。ただそれだけなんだ。
目の前の損得に執着しているおまえがとても哀れに見えてね。SEXをしながらマスカラの滲みを気にする女なんて、魅力ないさ。明日のことなんてどうだっていいだろ?
もし今この瞬間に息をすることを忘れていたなら、それでいいんだ。新しい空間が二人と中和した証だから。俺は細胞。おまえは、細胞。この世界、この大地に横たわる瞬間を……。
真っ白な眩しい闇は、俺にいつの日も存在する。真っ黒な優しい雨は、時として俺に降り続ける。
人生はオセロのようなもの。中間なんて存在しない。「嫌いじゃない」なんて言い方はクソだと思ってる。解りかけていることがいくつもあって、解らないと諦めてかけていることがいくつかあって…それってなんとなくだけど、結局は理解できないほうが幸せなのかもね。
守備的オフェンスの俺は、時にそう言い聞かせることで威厳と均衡を保とうと必死だ。今すぐ俺を抱いてくれ、わかるだろ?
全てに意味があるように、時は流れ闇に彷徨う。世の中は分別を急ぎ、あの時見た景色は音も立てずに干からびてしまう。もし俺のために一分でも時間を使ってくれるなら、教えてほしい。
俺の唄はこの乾いた街を潤してんのかな?
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