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ミュージックウェブマガジン "ばんび"は、ジャンルを超えて音楽を楽しみたいと考えるGROOVE SITEです。
特別編: kuroe インタビュー
―如何でしたか、終わってみて。
今回の連載に関しては書きたいことを書けたし、まだ書き足りてない部分もあるんですけど、やりたいことはやれたかな。
―文章をこういうふうに書くのは初めてですか?
一時期そっちに目覚めかけたことがあったんですけど。
1回目の「朧気な輪郭」っていうのは、そのときのさわりの部分をまとめて出そうかなと思ったんです。「心臓の鳴声」で終わりますけど、その間、間は関係ないようで関係ある……一応繋がってるんですよ、僕の中では。
―最初に打ち合わせした段階でも、最後は僕に戻る、と仰有ってましたよね。
間のものっていうのも、主語は変わりますけど結局は僕なんじゃないかなと。
―ちょっと毛色が違うかなと思ったのは太郎くんと花子ちゃん(「秘めた両性」)。
あれは僕の中の性に関する価値観を出したものですね。そういう時期でもあったというか。グラムロックがバック・ボーンにあるんで。今ライヴをやってても、奇異の目で見る人もいると思うんですよ。その外側から受けた力っていうのを自分の中で消化して。「なんでこんなひどいことを言う人がいるんだろう」って思ったりしますし。
―言われますか?
昔は結構言われました。僕にはメンバーがいるから、笑い飛ばしてやってこられましたけど。僕の中にも男と女っていう感覚はあるんで。
―あれだけ直截的な感じがしたんですよ。怒りのようなものをばんと出したい衝動に駆られたのかなと。
そのとおり(笑)。
―それまでは受け取り方に曖昧さを残して気がしてたんですけど、あれだけは「NO」ってはっきり言っちゃってるから、ある意味判りやすいですよね。
直接的に何があったって言わないですけど。例えば僕がトランスジェンダーだったとした場合、そのときは心の中に男と女といると思うんですね。性別というものがなければひとりの人間なんだから、だから奇異な目で見るのはよしてくれって思うんです。人間として愛してくれ、人間として理解してくれって言いたい。
誰もが持ってると思うんですよ。誰もがみんな解ってもらいたいことがあって、それをうまく出せないから迷うんじゃないかと。
―せっかくだから1話ずつ見ていきましょうか。「朧気な輪郭」から。
僕の中の音楽、表現することの目覚め、ですかね。朝起きてふと周りを見渡して、今の自分には表現するイメージしかない、道具がない、それは僕が音楽を始めるきっかけなんですよ。表現したいんだけど、何を使ってしたらいいのか判らない。ペンでもいいし、筆でもいい、楽器でもいい。朝目覚めて初めて目にした太陽が楽器に見えたりっていう話なんですよね。表現することの目覚め……だから「僕」なんですよね。
―2話目(「華麗な装い」)の感覚のずれっていうのは、もう絶対にありますよね。
行き違いみたいな。自分はこれをしたいんだけど、受け取る側との対話がないとずれてしまって、凄く滑稽なものになってしまう。熱弁する人がいて、それを醒めた目で見る人がいる、そういうずれを僕はあまり好きじゃないんですよね。
僕がやっている音楽は特殊だとは思わないけど、人によっては「NO」ってなるものだと思うんですよ。
―あの青年は見栄を張ってるじゃないですか。無理をしているというか。
みんなあると思います。生きてて無理していることのほうが多いかもしれない(笑)。
―あれはいちばん小説らしい感じがしますね。kuroeさんが小説というものを書こうとしているとは思わないんですけど。
思ってないですね(笑)。
やっぱり、僕は表現したいから、ペンでも表現できる喜びは芽生えますよね。これも文章にしたいって、どんどん増えていっちゃう。
―ステージでは、あまり具体的なものを出さないようにしていると思うんですけど、文章はどうしても出てきますよね。
はい。
―3話目(「世界は廻る」)は如何でしょう。ラストの1行がとてもロックンロールな。
僕が誰かに何かをしてあげたいと思うとしたら、その人のためにしてあげたいんだけど、それって結局「僕」がしたいことなんですよ。見ているものとか、考えていることとか、全部そうなんですよね。全部自分のため。エゴイストっていう感覚ではなく、それが当たり前。
―あくまでも主体が自分であるということですね。
たとえばこの椅子も、僕のためにある。何故なら僕が今座っているから。でもそれは僕がここにいないと、感じることはできないわけですよね。だから、その人がいなければ変わらない世界、その人がいることで変わる世界。そのひとがいなかったら世界すら消えてしまう。その人のために料理を作ってあげることもないし、その人がありがとうと言ってくれることもない。簡潔に言えないんですけど。
―目を閉じている瞬間にこの世界が実存していると誰に言えるのか? ってことですね。
そうそう(笑)。
その人がいなければ成り立たないというか。赤い車がこの世になかったら、あそこに赤い車が停まることはないっていうことですね。
―個を描いているようで、実は書いていることは宇宙の話だったりするわけですね。存在というか。
それが「交わる視線」に繋がってるんですよ。1回ワンクッション入って。
存在に対して否定的な声に対して、アクションを起こすべきだし、なんか……それを受け入れちゃいけないって。ひとりひとりが独立して存在しているんだから……。
―括るなと。
そう。
―あれは「NO」ということを通して、全部ひっくるめて「YES」と言おうという問いかけですよね。
そうなんですよ。
「秘めた両性」って、確かにちょっと外れてるかもしれない。でもなんだろう……繋がってるんですよ、すべてが。なかなかうまく伝えられないけど。
―もしかすると、あれがいちばん共感を呼びやすいかと思うんですよね。「NO」って言ってもいいじゃないっていうのは。
なるほど。
―書いててきついほうでしたか、それとも楽でしたか?
辛かったですね。不足している感じがして。
―名前を与えてしまった登場人物に肉付けしていく作業が辛かったんでしょうか。
それは自分の出会ってきた人を見ていて作り上げていったものなので。例えばある人の中にある――こういう言い方は好きじゃないんですけど女性らしさ……繊細さといったほうがいいのかな、そういうものだったり、女の人でも暴力的なまでに、凄く力強い人もいるわけで。じゃあ、性別の垣根っていうのはどこにあるのかなと。精神的な面で見たらそういう垣根ってないんじゃないかなって。
肉付けしていくのは、僕の感覚で人を見ていて、ですよね。
―デフォルメしているというか。
そうですね。僕が育った周りっていうのは、変な人が多かったんです。自由奔放で。僕の友だちでグラムロックを教えてくれた奴なんですけど、相当変わってましたね。マニアックというか、突き詰めちゃう人が多かったんです。突き詰めた中から見つけた自分らしさを持っているというか。
だから、デフォルメしているというより、いろんな人を詰め込んで作ってる感じなんですよね。一個一個を切り離してみると、そのまんまで。
―ああ、AさんとBさんとCさんを足して出来上がったのが花子ちゃんだったりするわけですね。
そう。象徴的な名前にしたかったんですよね。書類の記入欄みたいな。スタンダードというか。
―あれに敢えて名前をつけたのはどうしてですか?
名前があるっていうのは凄く重要なことだと思うんですよ。名前をつける、つけられるっていうのは、そこにものがある証というか。逆言うと、この世の中に名前がないものってないんじゃないかなって。まだ見つけられてないものは名前がないけど。
―もしくはまだ名前がついていない、自分の中にある感情のようなものですよね。
そう。でも大きく見ると、名前がないものってないから、だから名前をつけたかったんです。トランスであるとかやサブ・カルチャーって、一般的な人にとってはフィクションになってしまうんじゃないかと思うんですよ。本当にこんなことってあるの? 話のネタというか、猥雑な雑誌の投稿欄みたいな(笑)。でも、そういうものは存在するわけだから、その代表であるふたりには名前をつけなきゃって。
―逆に言うと、他の作品の彼、彼女は、自分の中にしかない可能性があることという意味ですね。
はい。だから、太郎と花子の話は僕が訴えたいこと。他の話は僕の中の物語という感じです。僕の内側の、「こういうことを思っているんだ」っていう。
―だから、連載の中ほどにあの話がくるわけですね。
はい。
―5話目「交わる視線」、あれは街に出て行く感じの話ですね。最も抽象的な話になっているような。
あれは「世界は廻る」と対になっているんです。いっぱい人がいる中でぽつんとひとり立っていると、自分の存在を疑ったり、自分の役割を見失ってしまいがちだと思うんですね。こんなに人がいるんだったら、僕がいなくなっても変わらないんじゃないか。でも、存在しているわけだから、誰かと視線を合わせるという。でも、それを受け入れてくれる人もいれば、そうじゃない人もいる。あの話は受け入れてくれなかった、じゃあどうしようかって。なら家に帰って鏡を見て僕はここにいるということを確かめればいいんだと。最後笑いながら街を出て行きますけど、でもあの笑いというのは少し虚ろというか、溜息混じりで。
―ここでないのなら、どこかに行こう、という。ここではないどこかには、自分の居場所があるというイメージなんでしょうか。
もちろん、自分の存在というのは判っているんですけど、街に出てしまったら解ってもらえない。だから、だったら家でひとりでいたほうが強く自分の存在を確かめられる。
要は孤独というものに対して、自分を突き詰めていくうえで必要なんだという。悲しいように捉えられてしまうことでも、それはプラスになるための助走期間、楽しいというのは、悲しいことに対する警告期間というような。
―すべては繋がっているという。
そう。
―だから、最後にもう一度個に戻ってくるわけですね。
自分が存在することがどれくらい素敵なことか、大事なことかっていうのを「心臓の鳴声」で表したかったんです。
―連載のタイトルにもなっていますが、ずっと「泣き声」だと思っていました。存在をアピールするための声だったんですね。
はじめにタイトルをカタカナにしたのは、曖昧さを残したかったんですよね。
―どうですか、書くことに慣れて、これからも書いていこうと思ったりしません?
文章を書くことは自分の中で趣味的な部分が大きいので、気が向いたらっていう感じですね。
ただ、継続することのできないものをやるというのは、自分ではちょっと考えられないというか。音楽はずっと続けていくと思ってやってるんで。途中でやめてしまうと、躓いた感じがあるんですよ。漠然とした期間続けるっていうのはできないなと。
でも、凄く楽しかったです。
―人に見せるために文章を書くのは学校の作文以来ですか。
そうですね(笑)。
―周囲の反応はどうでした?
バンドのメンバーに読んでもらったんですけど、「おまえ、わかんねーよ」って(笑)。Bettyとかは解ろうとしてくれてるんですけど、「こういうことが言いたかったんでしょ?」ってちょっとずれてる(笑)。「いや、ちょっと違うんだよね」って(笑)。
―でも、「ズレ」というのもひとつのテーマだったわけですよね。
そうですね。
反応を求めるというより、自分の中で自分なりに消化してもらいたいことを書いたっていう気がしますね。
―詩だと象徴的な言葉によってカラーが出てくると思うんですが、文章って具体性がある分、より自分が出てしまう気がしますが。
そうですね(笑)。
―自分の中にない言葉は出してきてないなって思ってたんですが。
そうです。やっぱり、ないことはできないというか。一回自分の中で消化しているものしか出せないですね。たまに無理やり詞をつけて失敗することもありますけど(笑)。
[HER CIGAR Offisial Site ] http://www.sound.jp/hercigar/
-- kuroe --
Birthday:
Blood Type:
Favorite:
9.23
B
妄想・読書・
喫煙
HER CIGAR Vocalist.
LIVE INFORMATION
6/17(金))
渋谷 La.mama
6/19(日)
渋谷 La.mama
6/29(水)
大塚RED-Zone
CD INFORMATION
suicide of dead-end world
01. clock noise
02. waiter
03. 屋根裏世界の情事
04. little love
05. antidote
06. Double suicide
07. Dead-end town
08. into the heaven
HER CIGAR
Vo.
kuroe
G.
rino
B.
Kazz
Ds.
Betty
第1回. 朧気な輪郭
第2回. 華麗な装い
第3回 世界は廻る
第4回 秘めた両性
第5回 交わる視線
第6回 心臓の鳴声
特別編 kuroeインタビュー
特別編: kuroe インタビュー
―如何でしたか、終わってみて。
今回の連載に関しては書きたいことを書けたし、まだ書き足りてない部分もあるんですけど、やりたいことはやれたかな。
―文章をこういうふうに書くのは初めてですか?
一時期そっちに目覚めかけたことがあったんですけど。
1回目の「朧気な輪郭」っていうのは、そのときのさわりの部分をまとめて出そうかなと思ったんです。「心臓の鳴声」で終わりますけど、その間、間は関係ないようで関係ある……一応繋がってるんですよ、僕の中では。
―最初に打ち合わせした段階でも、最後は僕に戻る、と仰有ってましたよね。
間のものっていうのも、主語は変わりますけど結局は僕なんじゃないかなと。
―ちょっと毛色が違うかなと思ったのは太郎くんと花子ちゃん(「秘めた両性」)。
あれは僕の中の性に関する価値観を出したものですね。そういう時期でもあったというか。グラムロックがバック・ボーンにあるんで。今ライヴをやってても、奇異の目で見る人もいると思うんですよ。その外側から受けた力っていうのを自分の中で消化して。「なんでこんなひどいことを言う人がいるんだろう」って思ったりしますし。
―言われますか?
昔は結構言われました。僕にはメンバーがいるから、笑い飛ばしてやってこられましたけど。僕の中にも男と女っていう感覚はあるんで。
―あれだけ直截的な感じがしたんですよ。怒りのようなものをばんと出したい衝動に駆られたのかなと。
そのとおり(笑)。
―それまでは受け取り方に曖昧さを残して気がしてたんですけど、あれだけは「NO」ってはっきり言っちゃってるから、ある意味判りやすいですよね。
直接的に何があったって言わないですけど。例えば僕がトランスジェンダーだったとした場合、そのときは心の中に男と女といると思うんですね。性別というものがなければひとりの人間なんだから、だから奇異な目で見るのはよしてくれって思うんです。人間として愛してくれ、人間として理解してくれって言いたい。
誰もが持ってると思うんですよ。誰もがみんな解ってもらいたいことがあって、それをうまく出せないから迷うんじゃないかと。
―せっかくだから1話ずつ見ていきましょうか。「朧気な輪郭」から。
僕の中の音楽、表現することの目覚め、ですかね。朝起きてふと周りを見渡して、今の自分には表現するイメージしかない、道具がない、それは僕が音楽を始めるきっかけなんですよ。表現したいんだけど、何を使ってしたらいいのか判らない。ペンでもいいし、筆でもいい、楽器でもいい。朝目覚めて初めて目にした太陽が楽器に見えたりっていう話なんですよね。表現することの目覚め……だから「僕」なんですよね。
―2話目(「華麗な装い」)の感覚のずれっていうのは、もう絶対にありますよね。
行き違いみたいな。自分はこれをしたいんだけど、受け取る側との対話がないとずれてしまって、凄く滑稽なものになってしまう。熱弁する人がいて、それを醒めた目で見る人がいる、そういうずれを僕はあまり好きじゃないんですよね。
僕がやっている音楽は特殊だとは思わないけど、人によっては「NO」ってなるものだと思うんですよ。
―あの青年は見栄を張ってるじゃないですか。無理をしているというか。
みんなあると思います。生きてて無理していることのほうが多いかもしれない(笑)。
―あれはいちばん小説らしい感じがしますね。kuroeさんが小説というものを書こうとしているとは思わないんですけど。
思ってないですね(笑)。
やっぱり、僕は表現したいから、ペンでも表現できる喜びは芽生えますよね。これも文章にしたいって、どんどん増えていっちゃう。
―ステージでは、あまり具体的なものを出さないようにしていると思うんですけど、文章はどうしても出てきますよね。
はい。
―3話目(「世界は廻る」)は如何でしょう。ラストの1行がとてもロックンロールな。
僕が誰かに何かをしてあげたいと思うとしたら、その人のためにしてあげたいんだけど、それって結局「僕」がしたいことなんですよ。見ているものとか、考えていることとか、全部そうなんですよね。全部自分のため。エゴイストっていう感覚ではなく、それが当たり前。
―あくまでも主体が自分であるということですね。
たとえばこの椅子も、僕のためにある。何故なら僕が今座っているから。でもそれは僕がここにいないと、感じることはできないわけですよね。だから、その人がいなければ変わらない世界、その人がいることで変わる世界。そのひとがいなかったら世界すら消えてしまう。その人のために料理を作ってあげることもないし、その人がありがとうと言ってくれることもない。簡潔に言えないんですけど。
―目を閉じている瞬間にこの世界が実存していると誰に言えるのか? ってことですね。
そうそう(笑)。
その人がいなければ成り立たないというか。赤い車がこの世になかったら、あそこに赤い車が停まることはないっていうことですね。
―個を描いているようで、実は書いていることは宇宙の話だったりするわけですね。存在というか。
それが「交わる視線」に繋がってるんですよ。1回ワンクッション入って。
存在に対して否定的な声に対して、アクションを起こすべきだし、なんか……それを受け入れちゃいけないって。ひとりひとりが独立して存在しているんだから……。
―括るなと。
そう。
―あれは「NO」ということを通して、全部ひっくるめて「YES」と言おうという問いかけですよね。
そうなんですよ。
「秘めた両性」って、確かにちょっと外れてるかもしれない。でもなんだろう……繋がってるんですよ、すべてが。なかなかうまく伝えられないけど。
―もしかすると、あれがいちばん共感を呼びやすいかと思うんですよね。「NO」って言ってもいいじゃないっていうのは。
なるほど。
―書いててきついほうでしたか、それとも楽でしたか?
辛かったですね。不足している感じがして。
―名前を与えてしまった登場人物に肉付けしていく作業が辛かったんでしょうか。
それは自分の出会ってきた人を見ていて作り上げていったものなので。例えばある人の中にある――こういう言い方は好きじゃないんですけど女性らしさ……繊細さといったほうがいいのかな、そういうものだったり、女の人でも暴力的なまでに、凄く力強い人もいるわけで。じゃあ、性別の垣根っていうのはどこにあるのかなと。精神的な面で見たらそういう垣根ってないんじゃないかなって。
肉付けしていくのは、僕の感覚で人を見ていて、ですよね。
―デフォルメしているというか。
そうですね。僕が育った周りっていうのは、変な人が多かったんです。自由奔放で。僕の友だちでグラムロックを教えてくれた奴なんですけど、相当変わってましたね。マニアックというか、突き詰めちゃう人が多かったんです。突き詰めた中から見つけた自分らしさを持っているというか。
だから、デフォルメしているというより、いろんな人を詰め込んで作ってる感じなんですよね。一個一個を切り離してみると、そのまんまで。
―ああ、AさんとBさんとCさんを足して出来上がったのが花子ちゃんだったりするわけですね。
そう。象徴的な名前にしたかったんですよね。書類の記入欄みたいな。スタンダードというか。
―あれに敢えて名前をつけたのはどうしてですか?
名前があるっていうのは凄く重要なことだと思うんですよ。名前をつける、つけられるっていうのは、そこにものがある証というか。逆言うと、この世の中に名前がないものってないんじゃないかなって。まだ見つけられてないものは名前がないけど。
―もしくはまだ名前がついていない、自分の中にある感情のようなものですよね。
そう。でも大きく見ると、名前がないものってないから、だから名前をつけたかったんです。トランスであるとかやサブ・カルチャーって、一般的な人にとってはフィクションになってしまうんじゃないかと思うんですよ。本当にこんなことってあるの? 話のネタというか、猥雑な雑誌の投稿欄みたいな(笑)。でも、そういうものは存在するわけだから、その代表であるふたりには名前をつけなきゃって。
―逆に言うと、他の作品の彼、彼女は、自分の中にしかない可能性があることという意味ですね。
はい。だから、太郎と花子の話は僕が訴えたいこと。他の話は僕の中の物語という感じです。僕の内側の、「こういうことを思っているんだ」っていう。
―だから、連載の中ほどにあの話がくるわけですね。
はい。
―5話目「交わる視線」、あれは街に出て行く感じの話ですね。最も抽象的な話になっているような。
あれは「世界は廻る」と対になっているんです。いっぱい人がいる中でぽつんとひとり立っていると、自分の存在を疑ったり、自分の役割を見失ってしまいがちだと思うんですね。こんなに人がいるんだったら、僕がいなくなっても変わらないんじゃないか。でも、存在しているわけだから、誰かと視線を合わせるという。でも、それを受け入れてくれる人もいれば、そうじゃない人もいる。あの話は受け入れてくれなかった、じゃあどうしようかって。なら家に帰って鏡を見て僕はここにいるということを確かめればいいんだと。最後笑いながら街を出て行きますけど、でもあの笑いというのは少し虚ろというか、溜息混じりで。
―ここでないのなら、どこかに行こう、という。ここではないどこかには、自分の居場所があるというイメージなんでしょうか。
もちろん、自分の存在というのは判っているんですけど、街に出てしまったら解ってもらえない。だから、だったら家でひとりでいたほうが強く自分の存在を確かめられる。
要は孤独というものに対して、自分を突き詰めていくうえで必要なんだという。悲しいように捉えられてしまうことでも、それはプラスになるための助走期間、楽しいというのは、悲しいことに対する警告期間というような。
―すべては繋がっているという。
そう。
―だから、最後にもう一度個に戻ってくるわけですね。
自分が存在することがどれくらい素敵なことか、大事なことかっていうのを「心臓の鳴声」で表したかったんです。
―連載のタイトルにもなっていますが、ずっと「泣き声」だと思っていました。存在をアピールするための声だったんですね。
はじめにタイトルをカタカナにしたのは、曖昧さを残したかったんですよね。
―どうですか、書くことに慣れて、これからも書いていこうと思ったりしません?
文章を書くことは自分の中で趣味的な部分が大きいので、気が向いたらっていう感じですね。
ただ、継続することのできないものをやるというのは、自分ではちょっと考えられないというか。音楽はずっと続けていくと思ってやってるんで。途中でやめてしまうと、躓いた感じがあるんですよ。漠然とした期間続けるっていうのはできないなと。
でも、凄く楽しかったです。
―人に見せるために文章を書くのは学校の作文以来ですか。
そうですね(笑)。
―周囲の反応はどうでした?
バンドのメンバーに読んでもらったんですけど、「おまえ、わかんねーよ」って(笑)。Bettyとかは解ろうとしてくれてるんですけど、「こういうことが言いたかったんでしょ?」ってちょっとずれてる(笑)。「いや、ちょっと違うんだよね」って(笑)。
―でも、「ズレ」というのもひとつのテーマだったわけですよね。
そうですね。
反応を求めるというより、自分の中で自分なりに消化してもらいたいことを書いたっていう気がしますね。
―詩だと象徴的な言葉によってカラーが出てくると思うんですが、文章って具体性がある分、より自分が出てしまう気がしますが。
そうですね(笑)。
―自分の中にない言葉は出してきてないなって思ってたんですが。
そうです。やっぱり、ないことはできないというか。一回自分の中で消化しているものしか出せないですね。たまに無理やり詞をつけて失敗することもありますけど(笑)。
[HER CIGAR Offisial Site ] http://www.sound.jp/hercigar/
-- kuroe --
Birthday:
Blood Type:
Favorite:
9.23
B
妄想・読書・
喫煙
HER CIGAR Vocalist.
LIVE INFORMATION
6/17(金))
渋谷 La.mama
6/19(日)
渋谷 La.mama
6/29(水)
大塚RED-Zone
CD INFORMATION
suicide of dead-end world
01. clock noise
02. waiter
03. 屋根裏世界の情事
04. little love
05. antidote
06. Double suicide
07. Dead-end town
08. into the heaven
HER CIGAR
Vo.
kuroe
G.
rino
B.
Kazz
Ds.
Betty
第1回. 朧気な輪郭
第2回. 華麗な装い
第3回 世界は廻る
第4回 秘めた両性
第5回 交わる視線
第6回 心臓の鳴声
特別編 kuroeインタビュー
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