ガラスの断面の様な日差しが僕を消し去れば良いと思った。
僕の身体は好物を貪り尽し満腹に苦しむセレブ集団みたいに
虚脱と虚無で満たされている。
また、朝が来た。いつもと何一つ変わらない朝だ。って、そう思った。
窓外には小鳥が鳴いている。それさえも邪魔に感じながら
その冷めた思考とは似つかわしく無いほど温もりを帯びてしまったベッドから
ゆっくりと老人の様に抜け出す。
死んでゆく人間の様に冷たくなってゆくベッドに腰を掛け数分間の夢想に耽る。
今日の夢は楽しかった。現実よりも現実的で、僕の浅墓な欲望の全てがそこにあった。
しかしどうだろう、ここに居る僕はいたって冴えない。
もっと夢を見ていたい。夢の中なら僕は特別なのに・・・。

煙草に火を点け、部屋を見渡すと、ここには僕が創ったものは何も無い事に気づく。
服、窓、テーブル、ペン、紙、椅子、ギター、目に映るもの全てが借り物だ。
それぞれに名があり役割がある。
僕にも名はある。しかし、この名は僕の何を示すだろうか。
また名前だらけの部屋を見回す。
ギターはギターの役割を果し、椅子は椅子の役割を果し、紙は紙の役割を、
ペンはペンの役割を、テーブルはテーブル、窓は窓、服は服。
寡黙にその存在を固持し続ける。まるで僕を嘲笑うかの様に。
僕は僕の役割を果せばよいのか。僕の役割ってなんだ?
ただ生きていればいいのか?笑ってさえいればいいのか?

白んでゆく景色を眺めながら僕は自由を想像する。
エゴで創った楽園を。目標も達成も無い世界を。
自由という陽炎の様な世界に逃避したかった。
誤解との接触を断絶したかった。
現実社会に自由など存在しない事も知っているし、
自由に現実社会が存在しない事も知っている。

睡眠薬を一粒飲んで、また眠りに就こう。
眠りの中の夢だけが僕の自由、夢だけが僕の全て
夢だけが僕を現実世界から消し去る為のたったひとつだけの術だから。
もう少し自由を満喫しよう。
現実は否応にもこの身に降り掛かって来るのだから・・・。
横たわるとベッドはベッドとしての役割を取り戻し、また熱を帯びてゆく。
この儘じゃいけない・・・。
それは分かっている。
だが僕の内側からの力が浅い自由の世界へと落としてゆく。
この儘じゃいけない・・・。
しかし、意識は身体を動かせないほど痺れてしまっている。
この儘じゃいけない・・・
でも、この想像は、僕が創ったモノなのだって気づいた。